プロジェクトストーリー02

丸森いわき幹線新設工事

この道は、東北・東京間の未来をつなぐ。

「丸森いわき幹線新設工事」は、東北と東京を結ぶ「東北東京間連系線」事業のひとつとして実施された。同幹線の建設によって、電力の取引は活性化し、再生可能エネルギー電源の導入拡大が実現。さらには、同エリア間を結ぶ送電線が2ルートとなることで、管内の電力安定供給・供給信頼度の向上も期待される。岳南建設が担当するのは、福島県伊達郡川俣町~二本松市~田村市船引町の3市町を跨ぐ20基9.54㎞の送電線工事。急勾配の山地が中心ではあるが、人里付近を経過する地域も多く、生活への配慮が必要な現場となっている。

安部 隆紀
現場代理人
安部 隆紀
PROFILE
1998年入社。岳南建設屈指の大規模プロジェクトの現場責任者を務める。福島県は自らの故郷でもあるだけに、この工事に懸ける思いは人一倍のものがある。
佐藤 浩也
技術責任者
佐藤 浩也
PROFILE
2011年入社。大規模プロジェクトにおいて技術責任者を任されるのは、初めてのこと。アサインの瞬間は「背筋が伸びる想いだった」と語っている。
赤間 剛士
技術員
赤間 剛士
PROFILE
2018年入社。福島県の現場は、相馬双葉幹線一部増強工事に続いて2件目。自身初となる基礎工事のサポートなど、新たなチャレンジに発見の日々を送っている。

力強く、繊細に。
道なき山中に道を拓く。

伐採・仮設道路建設

獣道すらない山中に鉄塔を建て、電線を架ける――。送電線工事は、重機や資材の通り道をつくることから始まる。地権者の理解を得て土地を借り、木々を伐採し、道を切り拓いていくわけだ。代理人を務める安部隆紀は、プロジェクトがスタートした2017年当時をこう振り返る。

「地域の森林組合の協力もあって、順調に伐採工程を進めることができました。最初の難関は、仮設道路を造成する工事でのこと。ヘリコプターによるレーザー測量の点群データから仮設道路を図面化したのですが、図面と実際の地形が異なるケースが散見されたのです」

木々の伐採も終わり、一度決定した工事用地は変更できない。求められたのは、地形に合わせて、臨機応変な施工を行うことだった。さらに、仮設道路造成中には、地中から巨大な岩盤が出土することもあり、完成には大きな苦労が伴ったのだという。

「この現場は、古くは黒御影石の採掘で知られる場所だったそうです。石を割るのが難しく、専門の業者を呼んだこともありました。送電線建設は、大空に電気の道を架ける仕事ですが、そのために地上の道を切り拓く必要があるんです。そして、その苦労は仮設道路が完成した後も続きます。台風やゲリラ豪雨でのり面が崩壊したり、冬の豪雪に「雪かき」を強いられたり……。大自然に立ち向かっていく厳しさを痛感させられました」(安部)

基礎工事

重機や資材を山中に運ぶ道が完成した後は、鉄塔の基礎つくる工程を迎える。基礎工事では、想定外の事態があたりまえに起こる。水が湧き出すか、大きな岩盤が現れるか。掘ってみなければわからないのである。ただ、今回の現場踏査段階においては「地表に岩が多く、転石や岩盤により掘削が難航すると予想された」(安部)というから、すでに多くの困難が待ち受けていることが確定していたと言えるだろう。

このフェーズから本格的に工事に参画したのが、技術責任者・佐藤浩也だ。一つひとつの作業に細心の注意を払い続けたと強調する。「大きな岩盤や転石が出土し、火薬類や蒸気圧で石を割る非火薬破砕剤を使用しながら掘削を進めることになりました。これらの手段で掘削を進めるのは、私にとって初めての経験。どのような威力で、どの程度の音が出るのか。周辺にお住まいの皆様の生活や、作業者の安全を考慮し、最善を尽くしたつもりです」

本プロジェクトの基礎工事における最大の難題は「急勾配の現場における精緻な施工」であった。鉄塔1基に対して基礎は4脚あるが、高低差10mを超えるケースもしばしば。そうした中でも、許される寸法の誤差はほんのわずかなのだという。

「鉄塔の大きさとは裏腹に、私たちには極めて精緻な作業が求められています。基礎の大きさは面5㎜・高低差3㎜の誤差に納めなければいけません。真夏の日差しと冬の厳しい寒さにさらされながらも、大規模な構造物を安全に建設し、かつ繊細なアウトプットを実現する。そのためにも、私たち技術を統括する存在が、綿密な段取りを組まなければいけないのです」(佐藤)

遙か彼方上空から、
人々の日常を守り、築く。

鉄塔組立工事

鉄塔の基礎が完了した後は、組立工事が始まる。今回、主に使用されたのは「クライミングクレーン」。高層ビルなどに用いられることで知られる。鉄塔の組立がより高い位置になっていくにつれ、中央に設置されたクレーンも構造物をよじ登るようにして高さを迫り上げていくことになる。

「鉄塔の高さは平均82.5mで、重量平均は98t。急傾斜地の多い現場を考慮して、慎重かつ安全に施工を進めていきました。クライミングクレーンを扱うのは初めてだったこともあり、鉄塔の内側に真横に張る水平支線の検討が難しかった記憶があります。とくに苦労したのは、重機のトラブルが発生したことです。短期での完成が求められていたこともあって、ここで作業が止まってしまっては後のプロセスに大きな影響を与えてしまいかねない。メーカーやリース先と密に連絡を取りながら、何とかトラブルを解決できました」(佐藤)

徐々に鉄塔が組み上がり、そこからまだ見ぬ空の道に想いを馳せる。それは、鉄塔建設に関わるメンバーにしか味わえない特権であり、岳南建設の原風景でもあると言えよう。実際に工事に携わる社員たちも、そこを特別なものと捉えているようだ。

「現場付近には阿武隈山系第二の高峰日山があり、山頂からの視界も広く、条件が良ければはるか太平洋を望むことができます。この風景を見る度に、自らが担う使命を再認識させられるんです」(安部)

「ここからの景色は、他では決して味わえない特別なもの。鉄塔の大きさ次第ですが、下に雲が見えるときもあるほどです。この仕事をしていてよかった。そう感じられる瞬間ですね」(佐藤)

架線工事

複数の鉄塔が建設された後は、そこに電線を張る「架線工事」がスタートする。そのプロセスは、ヘリコプターでまずはロープを各鉄塔に通し、地上のウインチで牽引しながらそのロープをワイヤに変え、そのワイヤを電線に変えるというもの。重い電線はヘリコプターでは持ち上がらないため、軽いものから始める必要があるというわけだ。

「電線とワイヤは重さが違うため、ワイヤから電線に変えている径間では電線が垂れこみ、ワイヤのみの径間はワイヤの垂るみが上がるという事象が見られました。この現場は鉄塔間の高低差が大きく、垂れこみすぎると木などに電線が入ってしまう懸念があり、中間の鉄塔での監視や延線張力(電線を引く力)の管理には特に気を使いましたね」(佐藤)

架線工事のプロセスにおいて、もっとも大きな課題は、その線下で生活する人々のあたりまえを守ることだった。そこで大きな活躍を見せたのが、入社9年目を迎える技術員・赤間 剛士だった。架線工事は、囲いのない場所で行われるもの。地域に住まう人々の安全や生活への影響を最大限に尊重しなければならない。

「この現場では、国道および河川を横断する径間があり、電線などの垂れ込みによって道路を塞いでしまうことや、上空からの落下物が走行中の車両や通行人の方々に当たってしまう恐れがありました。そのため、延線時には『径間防護ネット』を展開し、それ以上ワイヤロープや電力線が垂れ込んでしまうことを防ぎました。さらには、垂れ込みを目視で確認する人員を配置し、必要に応じて無線でのやり取りを行い、一定の垂れ具合を保つようにしました。そして、宙乗り作業においては落下物防止ネットを活用し、万が一手元が滑り資材や工具が落下しても地上に落ちずにネットで止まるように万全の対策を敷いたのです。社会のため、地域のために行う私たちの工事は、周囲の皆様の理解と信頼があって初めて成り立つもの。ほんのわずかな油断でそれを失うことがあってはならないのです」(赤間)

竣工に向けて

「丸森いわき幹線新設工事」の運用開始は2027年11月を予定している。仮設道路の復旧や巡視路の設置を踏まえると、岳南建設のゴールは2028年春くらいになりそうだ。メンバーたちは、まだ見ぬゴールに気を緩めることはない。今なお、多忙な日々に全力を注いでいる。

「架線工事からプロジェクトに参加した身ではありますが、これまでにない経験を重ね、『今やるべきことは何か』『やっておくことで次の工程が楽に進めるようになることはないか』を突き詰めることで、確かな成長を感じられています。一つひとつの仕事を積み重ねることで、この大規模工事に貢献していきたいですね」(赤間)

「このプロジェクトに技術責任者としてアサインされたとき、重大な責任に背筋が伸びる想いがしましたが、今の私はそれに応えていくことしか考えていません。ひとつの現場が上手くいく度に感じる『安堵』。それが一つひとつ積み重なっていくことで、プロジェクトのゴールが見えてくるのだと思っています」(佐藤)

「丸森いわき幹線は全6工区体制で工事を進めています。他工区を担当する同業他社はライバルではありますが、共に未来への道を切り拓くパートナーでもあるのです。それぞれの良いところを学び合い、切磋琢磨していく。企業の枠を超え、同じ志を抱く。このプロジェクトに携われたことは、私にとって何よりの喜びになっています」(安部)

より豊かな未来のために、地域の暮らしを支えるために。日本全国を旅し、暮らし、インフラを築く。その仕事は、熱い絆とロマンに満ちている。大自然と向き合い、技術の粋を尽くした後で、仲間と交わす杯は格別のものだ。そのかけがえのない日々は、一人ひとりの人生に誇りと喜びをもたらしてくれるものとなるはずだ。

※2026年に取材実施